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■『戦旗』1667号(10月20日)4-6面

  
 
希望は闘いにあり!
 
階級的労働運動かけて岩国に結集しよう
 
          
                


 実質賃金は上がらず、生活は苦しい。排外主義と戦争の危機が煽り立てられ、不安感がそこら中に漂っている。民衆は自己責任と差別を意識に刷り込まれ、個別バラバラに分断されている。民衆の自己解放の道はあるのか? 団結と連帯を練り直し、自ら闘いに決起するほかに希望はない。階級的労働運動の再建、前進を皆さんに訴える。


二〇二四年階級攻撃は極まっている

上る物価、上がらぬ賃金

 物価上昇が続いている。一方、24春闘の賃上げは連合の発表で大企業(組合員一〇〇〇人以上)で5・24%、中小(同三〇〇人未満)で4・45%。その差は0・79ポイントで昨年の0・46ポイントよりも拡大した。さらに、未組織労働者を含めた統計でみると、日本商工会議所の調査で賃上げ率(ただし定期昇給も含む)が3・62%に対し、日本経団連が発表した大企業の賃上げ率は5・58%と、企業規模によって格差が拡大したのが鮮明になった。さらに非正規雇用労働者の賃上げ率は3・43%にとどまった。賃上げを実施した企業でも人手確保のために行う「防衛的な賃上げ」と答えた企業が59・1%、さらに別の調査(フォーバルGDXリサーチ研究所調べ)では四割弱の企業が「賃上げ予定なし」という状況である。こうした結果、賃金格差の拡大と実質賃金の低下が続いている。最新の六月は実質賃金プラスにようやく持ち直したが、定額減税やボーナスの影響もあるので、今後の見通しは引き続き不透明だ。

最低賃金今すぐ一五〇〇円以上!

 最低賃金の中央目安は三ランク共通で五〇円となった。これはこの間の最低賃金がそもそも低すぎることや都市と地方の格差の問題、それらを訴える運動の進展を背景としているが、現在の物価上昇、格差拡大基調の下ではなお不十分な額だ。目安プラス三四円の「徳島ショック」を筆頭に地方の反乱も継続中だ。地方や大都市近郊では最賃の低額据え置きが人口流出の根拠ともなっており、全国一律最賃の必要性はますます高まっている。

二つの戦争、続く殺戮

 ウクライナ戦争は開戦から二年九カ月が経過した。ドローンや小型ミサイルを駆使した現在の戦争では、戦車などの大型の兵器は標的になりやすく、結果昔ながらの塹壕戦が中心となって、ウクライナ国内の戦線は膠着している。だが、戦線が動かないということは犠牲が少なくなることではない。その上、ウクライナによるロシア領侵攻が行われ、戦争は終わりの見えない拡大の様相を呈している。
イスラエルによるガザ虐殺の犠牲者は四万人を超えた。これはあくまでも確認された人だけの数字だ。がれきの下に埋まっている行方不明者などは入っていない。二〇二四年四月、イスラエルは国際法を無視してイランに対する攻撃を実施し、当然イランは反撃した。二〇二四年七月三一日、イスラエルはイラン国内で和平協議中のハマス幹部を暗殺。ヒズボラとイスラエルの戦闘は二〇二四年一〇月一日、イスラエルによるレバノン地上侵攻という事態に至った。イランは直ちに弾道ミサイルで反撃。
 イスラエル―ネタニヤフ政権はガザ虐殺をやめようとする意志がみられない。停戦交渉は暗礁に乗り上げている。イスラエル国内ですら挙国一致内閣への批判は強まり、停戦を求めるデモが拡大している。九月一日にはテルアビブで三〇万人、全国で五〇万人の停戦を求める反ネタニヤフデモが行われた。労働組合もストライキを決行している。しかし、ネタニヤフ政権はガザでのジェノサイドをやめようとしない。

戦争を止めるのは世界の民衆の闘い

 ウクライナとパレスチナの二つの戦争は西側帝国主義諸国のダブルスタンダードをはっきりと露呈させた。ウクライナにおいてロシアの侵略を非難し、ロシアが主張するドンバスのロシア語話者の防衛を否定するのであれば、軍事占領下にあるガザのパレスチナ人の抵抗権を否定し、イスラエルの自衛権を肯定するのはいかにもおかしい。そんな帝国主義諸国のありようはすでに国際的には見透かされている。図1の世界地図の濃い色の国々はガザを含むパレスチナを国家として承認している。ものの見事に帝国主義諸国とその同盟国が外れ、いわゆるグローバルサウスの圧倒的な支持があることがわかるだろう。
 日本で報道される「国際世論」は帝国主義のプロパガンダにゆがめられている。パレスチナを支持し、イスラエルによるジェノサイドに反対する闘いは帝国主義足下の国々でも継続されている。戦争を止めるのは「真の国際世論」と世界の民衆の闘いにかかっている。

今年も進行した日本の戦時体制づくり

 今年も通常国会で戦時体制の法整備が進んだ。民間企業版秘密保護法たるセキュリティクリアランス法、農民の作付けの自由を奪う食料供給困難事態対策法、技能実習生問題を看板の架け替えで終わらせた挙句、定住権のはく奪を拡大する入管法改悪、自治権をはく奪する地方自治法改悪など枚挙にいとまがない。さらに過去に成立した悪法も施行や拡大が続く。健康保険証をはじめとするマイナンバーカードの拡大、共謀罪、特定秘密保護法、重要土地規制法、軍事費倍増、敵基地攻撃能力の整備、武器輸出解禁等等々。

正念場を迎える改憲攻撃

 日本国憲法が権力を縛ってきた平和主義や基本的人権、主権在民などがなし崩しに破壊され続けている。ここにきて自公政権は憲法の改悪に踏み込もうとしている。すでに国会の憲法調査会はハイペースで開催され、具体的には九条の二で自衛隊明記、緊急事態条項創設が狙われている。自衛隊明記は現行九条を死文化する。緊急事態では議会の選挙が停止され、立法と行政の区別がなくなる。緊急事態条項の理由とされている大規模災害は現行法でも十分に対応できる。むしろ、今年一月一日に発生した能登半島地震被害に対する政府の無作為を思えば、狙いは民衆の救援などではなく、一〇一年前の関東大震災における戒厳令のような治安管理、弾圧だろう。その戒厳令が朝鮮人・中国人や社会主義者に対する虐殺をもたらしたことも考えれば、「緊急事態に限って」などというまやかしに騙されてはならないだろう。
 国会の勢力は改憲派で三分の二を占められており、すでにいつでも発議が可能な状態だ。改憲を許さない闘いを、あらゆる現場で訴えなければならない。

日米韓・日比をはじめとする多国間演習・軍事協力の拡大

 日米韓軍事同盟化はますます進行している。六月には初の日米韓三国合同軍事演習フリーダム・エッジ、八月には核攻撃を含む米韓合同軍事演習ウルチフリーダムシールドが行われた。さらに南中国海の情勢を口実に今年は日比訪問協定も締結された。敗戦から八〇年を経て、日本の軍隊が再びフィリピン諸島への駐留を図っている。
 日米をはじめとする多国間軍事演習は拡大の一途をたどっており、二〇二三年には年間五六回を数えた。(図2 二〇二四年三月三日読売)。実に二〇〇六年(三回)の一八倍である。

軍備強化

 沖縄から九州にかけての島々を中心に軍備強化が進んでいる。ここ数年、宮古島、石垣島、沖縄島のうるま市、奄美大島などへのミサイル部隊配備が攻防になってきたが、その総仕上げとして指揮系統の部隊編成)が行われた。沖縄「県」内と奄美大島のミサイル部隊は三月うるま市に編制された第七地対艦ミサイル連隊に集約される。さらに二〇二五年三月までに大分県湯布院に第八地対艦ミサイル連隊を新編する。既存の第五地対艦ミサイル連隊と合わせて三個連隊を統括する部隊として二〇二四年三月第二特科団が編成されている。
 ミサイル部隊だけでは戦争はできない。撃てばなくなってしまうミサイルを大量に保管する必要がある。こうして全国に弾薬庫を増設する計画が進行中だ。既に問題になっている大分県敷戸弾薬庫や京都府祝園(ほうその)弾薬庫だけではない。最終的には一三〇棟の大型弾薬庫増設が計画されている。
 弾薬庫があり、部隊があってもやはりまだ、戦争はできない。弾薬や増援部隊を前線に運ばなければならない。こうした作戦のために海上輸送群という三自衛隊から独立した部隊がつくられ、呉の日本製鉄跡地に配備しようと画策されている。船も民間船の借り上げ(おそらく戦時になれば徴用)だ。荷揚げ、荷下ろしも民間空港・港湾の軍事利用とそのための整備が狙われている(図3 二〇二四年三月二八日、西日本新聞)。すでに、訓練では民間船や民間港湾の活用が具体的に進められており、二〇二三年一一月一三日には大分空港、同一五日には岡山空港で福岡県築城基地のF2戦闘機が着陸訓練を行った。

隠蔽される性暴力事件

 二〇二三年一二月沖縄で、またしても米兵による未成年女性への性暴力事件が発生していた。まずもって軍隊の駐留があるが故の性暴力を非難しなければならない。だが、今回の事件の問題性はそのことだけにはとどまらない。警察は起訴後も情報を外務省にしか伝達せず、外務省は沖縄防衛局や沖縄「県」に対してはこれを伝えなかったのだ。事件は六月の沖縄県議会選挙が終わった後、報道によって明るみに出た。さらに続報は、この一〇年ほどこのような隠ぺいが全国で行われてきたことを明らかにした。さらにこの隠ぺいの間にも別の性暴力事件が発生し、事件を受けての運用改善後も続発している。軍事中心の政策が人々の尊厳を踏みにじっているのだ。

軍事費増大が民生予算を圧迫

 安保三文書以降の軍事費増強の流れは教育・医療・福祉といった民生予算を圧迫している。例として二〇二四年の介護報酬改定をあげよう。介護業界は空前の人手不足で毎年事業所閉鎖や倒産が過去最高を更新し続けている。さすがに二〇二三年はこれが問題となり保守系の議員まで含めて介護報酬増額改定の声が高まった。しかしふたを開けてみればかろうじて増額となったものの、全体でプラス1・59%、しかも介護保険のメニューで最も人手不足の訪問介護でなぜか減額改定が行われてしまった。案の定、今年も事業所閉鎖、倒産過去最高の見出しが躍ることになった。

弾圧

 戦時体制は市民・労働組合の抵抗を押しつぶして進められる。二〇一七年から続く全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部への弾圧はその代表だ。二〇二四年六月一七日、一連の弾圧事件のうち京都の事件の論告求刑公判が行われた。被告にされているのは当時の委員長と副委員長(現委員長)。「事件化」されているのは、要求、監視行動、ストライキ、解決金受け取りなど労働組合として当たり前、というよりなくてはならない行動ばかりだ。求刑は一〇年。ほかの事件と合わせて、実に計一八年! 「人でも殺したんですかね!?」という現委員長の怒りは正当だ。判決は二〇二五年二月二六日の予定。なんとしてもまともな無罪判決を勝ち取ろう。

急ピッチで進む労基法解体攻撃

 直接的な分かりやすい弾圧と並行して、労基法体制の解体というもうひとつの攻撃も進行している。厚労省は二〇二四年一月二三日に設置した労働基準法制研究会を急ピッチで進めている。キーワードはデロゲーション(適用除外)だ。適用除外というと例外を作るように聞こえるが、いま議論されている内容では労基法の保護の方が例外になってしまいそうだ。過半数組合の同意があれば労基法のルールは守らなくてよい(働かせ放題)、過半数組合が無くても親睦会の類と合意できれば良いなど、実行されれば基準が基準で無くなり、契約自由の労使対等どころか使用者独裁の世界がやってくる。労働運動の正念場だ。さらにフリーランスについても労基法以下の基準を作る、労働時間の例外もさらに拡大するなど改悪案が目白押しである。


攻撃の激化の中、新たな抵抗の結合

沖縄

 情勢の深刻化はしかし、抵抗の結合の深化もまた生み出している。二〇二四年八月一〇日、沖縄県民大集会が二〇〇〇人の参加で開催された。これは、もともとは20年前の沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事件をテーマとしたものだったが、前述の米兵性暴力事件の隠蔽発覚を受け、「許すな米兵の性暴力」というテーマが加わった。この日は全国各地で連帯行動も取り組まれた。

祝園

 各地で進む軍備強化に対応して新たな立ち上がりも相次いでいる。京都府精華町の祝園弾薬庫では二〇二四年三月二〇日「京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク(略称:祝園ネット)」が立ち上がった。住民に対する説明会を求めて地元や周辺市町村の市民に訴え、これまでに三度の大学習会を開催している。回を重ねるごとに参加者は増大しており、一回目は二〇〇名、二回目は三〇〇名、三回目の八月二五日には五五〇名の参加で椅子も足りなくなった。

結合する全国の反基地闘争

 二〇二四年九月二一、二二日には海上輸送群配置がもくろまれる広島県呉市で「大軍拡と基地強化にNO!」西日本交流集会が開催された。さらに二〇二四年一二月一日には大分県敷戸弾薬庫現地よりミサイル弾薬庫反対全国集会が提起されている。従前からの首都圏横田基地反対運動と岩国基地反対住民の相互メッセージ交換なども含め、全国の闘いはますます結合を深めている。これを促進していかなければならない。


岩国の存在感はますます上がっている

隠ぺい事件は岩国でも

 沖縄で発覚し、問題となった米兵による性暴力事件の隠蔽は岩国でも起きていた。二〇二二年に強制わいせつで起訴されて不起訴処分となっていたことが分かったが、それ以外は隠ぺいによって一切不明である。「基地との共存」の陰で犠牲があり、そしてそれは闇に葬られたのだ。

オスプレイ墜落

 二〇二三年一一月二九日、横田基地所属のCV22オスプレイが屋久島沖で墜落し、乗員八名が死亡した。原因はギアボックスの故障であり、機体そのものの欠陥だ。この機体は岩国から離陸し、沖縄に向かっていた。そして、例によって市民の抗議を無視し、事故後ただちに飛行停止とはならず、しばらく飛び続けた。

ミゲルキース

 二〇二四年五月二一日、事前集積艦ミゲルキースが岩国基地に五回目の寄港をしたと考えられる。なぜこんな言い回しをしているかというと、今回の寄港では行政に対して艦名・目的など一切の連絡がなかったからだ。ミゲルキースは食料・弾薬など軍事作戦を行うために必要とされるものを前線に運ぶ重要な艦艇で洋上遠征基地とも呼ばれている。これまでも対中国や対朝鮮の戦争に備えた確認として岩国寄港が行われてきたと考えられるが、今回の出来事は実践に備えて軍事機密が拡大していることを示している。

拡大した騒音被害

 二〇二四年三月、岩国基地の拡張・強化に反対する広島県住民の会と瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワークが共同で大竹市阿多田島の騒音調査を実施した。滑走路の沖合移設以降、騒音地域が変化し、一方で騒音被害は軽減できていないということは言われてきたが、大規模な実態調査によって滑走路北側延長線上にある阿多田島の被害が明らかになった。このほかにも中国山地の訓練空域との関係で広島県西部では騒音被害が拡大しており、軍事訓練の拡大強化との関係もあって、住民の平穏な生活を妨害している。

強化され続ける岩国基地

 昨年の事故にもかかわらず、今度は空母艦載機のオスプレイが岩国に年内に配備されると発表された。また、あわせて空母艦載機のFA18も一部隊がF35Cに機種転換される。岩国の空母艦載機はアメリカから見て東アジアで最も前方に位置する部隊だ。部隊の強化は戦争の危険の増大と岩国の被害の増大を意味する。

フル活用される岩国基地

 西日本や鹿児島、沖縄の島々を舞台とする日米合同軍事演習では後方・整備拠点として岩国基地はフル活用される。二〇二四年七月二八日~八月七日まで行われたレゾリュート・ドラゴン24でも普天間の海兵隊オスプレイが岩国に飛来し、訓練を行った。
 岩国は対中国、対朝鮮の戦争において「最前線のすぐ後ろ」に位置する。前進・後退のいずれでも重要な拠点となるので、それらの確認もかねて繰り返し訓練に使われているのだろう。


民衆はやられっぱなしではない

自民党総裁選のから騒ぎ

 九月末、報道は自民党総裁選にジャックされた。候補は九人乱立。その政策たるや解雇規制の解体だの、改憲だのと反動公約のオンパレード。だが、その一方で統一教会問題も、裏金も膿を出し切ろうという候補は誰もいない。決選投票の結果、石破茂が自民党総裁に選ばれたが、今の自民党ではだれが総裁になろうと政策上の変化は全く期待できない。石破は総裁選の最中は野党と論戦してから解散とうそぶいたが、ふたを開ければ臨時国会始まってすぐの解散となった。
 自民党総裁選に先立って行われた野党第一党の立憲民主党代表選も新自由主義者で野党共闘路線に否定的な野田佳彦が選ばれた。これでは総選挙の結果にかかわらず、反労働者的な政策が続くことになる。

デマゴギー政治の横行が続いている

 格差の拡大を背景に階級闘争が激化している。残念ながら日本では右派デマゴギー集団のほうが目下優勢だ。その代表というべき日本維新の会はここにきて勢いがそがれてきた。二〇二四年八月二五日投開票の箕面市長選では現職の維新・上島が大差で落選した。兵庫県知事斎藤は県職員に対するパワハラ(痛ましいことに二人も自殺者が出ている)や県政の私物化が問題となり、維新をふくむ県議会全会一致で不信任され失職した。
 さしもの神通力もなくなってきた維新だが、にも関わらず万博・カジノは止まらない。万博開催一年を切っているのに、関西ではまったく盛り上がっていない。マスコミや企業のちょうちん行列がむなしく響くだけである。各種アンケートでも行きたいという人の数は伸びず、仕方なしに行政は学校など子どもを動員しようとする始末。だが、もともとごみの島でメタンガスが噴き出し、実際に爆発事故も起こった会場への子どもの動員に保護者も教育関係者も反発している。そもそも子どもを動員しようにも、大阪の子どもの数ほどバスも運転手も確保できていないのだ。
 維新の勢いがなくなったからと言って全く安心できないのは、代わりに出てきたのもやっぱりデマゴーグという現状があるだろう。二〇二四年七月七日投開票の東京都知事選では元安芸高田市長の石丸伸二が一六五万票以上も票を集め、「石丸現象」と呼ばれた。だが、この石丸の主張たるや維新同様に敵を作ってたたくというだけで中身のある政策は何もない。残念ながら民衆の不満はこうしたデマゴ-グによって回収されてしまっている現状がある。

差別排外主義の強化

 戦争準備、格差拡大、階級対立の激化とあらゆる側面から右派的に差別排外主義が強化されている。民族差別、部落差別、障害者差別、性差別etc等々。その一例として現代の奴隷制と言われている外国人技能実習制度改め育成就労制度を見てみよう。建前は実習とか育成とか言っているが、実際には人手不足の業界に労働者を供給するための労働政策だ。しかし、その人々はあくまで人材であって労働者としての権利はもちろん、人間としての権利が大幅に制限されている。「子どもを産めば強制帰国」と脅されて孤立出産に追い込まれる人、職場で暴力にさらされる人、被害を受けても転職はもちろん同職種での転籍も支援なしにはなかなか認められない……。そんな制度の問題にはほとんど手を付けず、看板の架け替えと抱き合わせで、永住権取り消しが拡大される。納税の不備など意図的でなくとも誰にでも起きうることだ。日本国籍保持者なら税務署で謝って追徴分を合わせて払えばそれでおしまい。ところが、外国籍者だと最悪の場合国外追放。これは理不尽だろう。

だが、民衆はやられっぱなしではない

 世界ではデマゴギー極右も伸長しているが、労働者民衆の闘いもまた前進している。世界的な物価高騰の中で、全世界でストライキが拡大している。欧州などで排外主義右翼が政権につく一方で、同じ選挙で左派も勢力を拡大している。ガザのジェノサイドとの闘いも全世界で拡大している。
 一方われわれの日本社会は率直に言って労働者民衆の結合が弱い。しかしその中でも反撃の闘いは着実に成果をあげている。
 二〇二三年一〇月二五日、最高裁は男性から女性へと戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくすことを要件とする性同一性障害特例法の規定を違憲とした(一五人の裁判官一致)。二〇二四年七月三日には同じく最高裁が障害者などに対する強制不妊手術が行われる根拠となった旧優生保護法を、これも一五人全員の一致で違憲と断じた。ジェンダーや生殖をめぐる差別が強化されている今日、これらの勝訴がもたらしたものは大きい。
 被爆者、被爆二世三世の闘いも粘り強く続けられている。二〇二四年九月九日長崎地裁は行政上の線引きで被爆者と認定されてこなかった「被爆体験者」の一部を被爆者と認定した。行政、原告双方が控訴し、闘いは続く。被爆二世を援護の対象とすることを求める被爆二世訴訟は長崎が二審敗訴で上告、広島は今年一二月一三日二審判決の予定だ。
 二〇二四年八月二八日、原子力規制委員会は日本原電敦賀二号機の再稼働審査について敷地直下の活断層を理由として不合格とした。福島第一原発事故以降の新規制基準に照らせば、これは当然の措置だが、当然の措置を取らざるを得なくさせたのは闘いの成果だ。反原発の闘いは老朽原発再稼働、青森への使用済み燃料移送、上関中間貯蔵施設問題、若狭での使用済み燃料乾式貯蔵などが問題となっており、全国で闘いが展開されている。
 二〇二四年九月一三日、名古屋高裁は大垣市の風力発電計画についての学習会を組織した市民の情報を公安警察が収集していた事件について、違法と断罪した。岐阜県は上告を断念し、判決は確定した。市民運動・労働運動への弾圧、あるいは圧力として以前から公安警察による情報収集活動は行われており、これを真正面から違法とした今回の判決は民衆の闘いにとって大きな意義がある。
 二〇二四年九月二六日、静岡地裁は捜査機関の「証拠」を捏造と断定し、袴田巌さんに再審無罪の判決を出した。事件から五八年、死刑確定から四四年、最初の再審開始決定から一〇年であった。予断と偏見に基づく捜査が無実の袴田さんの五八年を奪った。
 部落差別によって「犯人」にされている石川一雄さんの再審開始をめぐる闘いは事実調べ・鑑定人尋問の実現が焦点化している。狭山事件では石川さん宅から証拠として見つかった被害者の万年筆のインクが、そもそも被害者が使っていたものと成分が違うなど、石川さんの無実を明らかにする数多くの事実が弁護団より示されている。
 三里塚では深夜の離発着やB滑走路延伸、C滑走路建設、ターミナル集約など周辺住民の生活を無視した空港機能強化が強引に進められている。その中で昨年、農地に対する強制執行が行われた反対同盟の市東孝雄さんの耕作権裁判が二〇二四年九月三〇日に結審した。捏造が強く疑われる「同意書」「境界確認書」が「証拠」として出されたり、そもそも耕作者の権利を守るための農地法を土地取り上げのために使うなど、とんでもない裁判である。市東さんはじめ、反対同盟と支援は「闘魂ますます盛んなり」と新たな被害を受ける地域住民と結合しながら空港反対をつらぬいている。


未来への希望をつくる階級的労働運動の闘い

関生弾圧

 二〇一七年に始まった全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部弾圧との闘いは潮目が変わってきた。和歌山事件やビラ撒き事件について無罪判決が確定した。和歌山事件では憲法二八条の保護は産別労働組合を対象に含むという明快な判例もできた。当初、警察発表をたれながすだけであったマスコミも特集番組・紙面を作成するなど「戦後最大級の労組弾圧事件」と向き合い始めている。反弾圧シンポジウムに名を連ねる各界の人々も拡大してきている。弾圧を跳ね返して産別政策運動の再建へと闘いは続く。

最賃闘争

 最賃運動への支持は拡がっているし、確実に審議にも影響を与えている。異議申し立てなど、以前は「聞き置く」以上のものではなかったが、近年では公益委員から積極的に「どのような政策があれば最賃をあげることができるか」といった質問が出るようになってきている。中小企業対策など最賃をどうやったら今以上にあげられるのか、政権も注目している。しかし、これ以上の運動の進展のためには民衆の支持の主体性をどう獲得できるかが課題だ。デモやアピールに対して以前よりも好意的な反応が拡がってきたものの、まだ「お願い」「頼むね」というレベルにとどまっているのが現状だ。

港の平和を守れ!全港湾の闘い

 全港湾は職域が軍事化の最前線に立っている。港は軍民共用化や軍事演習の現場、避難訓練を口実とした自衛隊の展開など、既に闘いの中にある。港で働く労働者自身の安全と、戦時となれば民生用物流が犠牲になるという意味では港から離れた場所にいる民衆まで含めて、全港湾が背負っている任務は大きい。

外国人労働者とともに進む労働運動を

 差別排外主義が強化され、入管法が改悪されても闘いはやむことはない。外国人労働者の組織化はさらに深化している。規模が拡大すると同時に全国的に当事者自身による組織化が進展している。労働者に国境はない。世界では階級闘争の一つの根拠に移民労働者の存在がある。日本社会の変革を共に担う労働者階級の仲間として結合を深めていこう。

介護政策運動

 軍事優先、大企業優先の政策の中で民衆の生存が切り捨てられている。中でも高齢者と障害者はそのやり玉に挙げられている。前述のとおり、今年の報酬は減額改定。これでは高齢者の生存権を守れないと全国でヘルパーが決起している。ヘルパー国賠は高裁で敗訴したものの裁判所も理不尽な現状は認めざるを得なかった。現在上告中。訪問介護報酬をもとに戻せ、もっと増やせというキャンペーンは全国で取り組まれている。

日韓連帯、食い逃げ日東電工許さんぞ!

 韓国に進出した日本企業の労働者使い捨て、食い逃げを根拠として労働運動の日韓連帯闘争が継続している。今闘われている韓国オプティカルハイテック争議は親会社日東電工が悪辣なこともあり、全国的な闘いになっている。積み重ねた闘いは日韓の労働者の連帯関係を深化させている。
 われわれは決して多数派ではない。しかし、これら反撃の闘いこそが未来への希望だ。


世代を継いだ反撃の一時代を作ろう 先進的労働者は岩国に集まろう

団結禁止法廃止から二〇〇年

 今年二〇二四年はイギリスで団結禁止法が廃止されてから二〇〇年にあたる。一八九九年、フランス革命に対する干渉戦争の最中に、イギリスは資本家の利益を守るため労働組合を禁止する団結禁止法を制定(翌一八〇〇年施行)した。非合法下でもイギリスの労働者は闘いを継続し、一八二四年この法律の廃止を勝ち取る。ここで、労働組合の結成が犯罪ではなくなったわけだが、団結権の保障、争議の刑事免責、民事免責を勝ち取るのはさらに時間を要した。一八七一年労働組合法制定で団結権の保障、一八七五年共謀と財産保護法で争議の刑事免責、民事免責が明確に認められるようになったのは実に一九〇六年の労働争議法制定を待たなければならない。
 イギリスの労働者は法律の制定を待って闘ったのではない。むしろ闘いによって資本家たちに法律制定を強制してきた。一八九九年の大ドックストライキも現代的なストライキ権が確立する前だという事に注意が必要だ。労働組合の禁止を跳ね返すのに二四年、そこから団結権を勝ち取るのに四七年、さらにそこから争議権の確立まで三五年。三世代を超える闘いである。

世代を継ぐ反撃を

 翻ってわれわれの闘いの歴史はどうか? 一九八七年国鉄分割民営化、派遣法制定、一九九五年日経連が「新時代の日本的経営」を発表し、以降新自由主義、非正規雇用化、格差拡大が年を経るごとに加速度的に進んだ。あれから四〇年……。思えば後退戦の歴史である。八五年にまだ小学生だった氷河期世代とそれ以降の世代にとっては、これが労働人生そのものだ。
 世代を継いだ反撃をしなければならない。「今があるのはあの人たちの闘いがあったから」と記憶される闘いを粘り強く創ろう。労働者は一つだ。企業規模や職種、身分、属性での差別を許さない! 団結の文化を再建しよう!! 差別やデマに踊らされても私たちの解放はない。闘いに確信を持とう。今年も闘いを持ち寄り、岩国に結集しよう。

 


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